「本番に弱い」あなたへ。
大学入試や高校受験など、まさに様々な「本番」が多いこの1月。受験生をはじめ、スポーツに打ち込む高校生など、「本番に弱い」ことを悩んでいる人も少なくないのではないでしょうか。2019年まで星槎国際湘南で野球部部長として率い、自身もプレイヤーとしての経験をもつ、塩谷先生による「ゾーン」に入る方法のお話です。
星槎スポーツ新聞 Vol.21 「オピニオン」
大舞台で実力を発揮するには?(ゾーン編)
星槎国際高等学校 生徒指導部長 塩谷 貴男
本番で必要なのは「ゾーン」
スポーツ選手が最高のプレーをして実力を発揮する状態を『ゾーン』とか『フロー』と呼ぶことがある。日本では昔から信じられない力を発揮する状態を表現する『火事場のばか力』という言葉がある。家が火事という緊急時に普段なら持ち上げられないタンスなどを、家の外まで運び出したといった逸話からきた言葉だ。
このような状況はスポーツ界でも多く語られ、スポーツ心理学で研究されてきた。ゾーン、フローという理想的な心 理状態、ビッグパフォー マンス状態をいかにして 作り上げ、オリンピック などの大舞台で最高の力 を発揮させるかという試 みがされてきた。
ゾーンは作れる!
ゾーン には意図的に入ることが できるといわれている。 そのためには、リラクゼーション(緊張を緩める)やサイキングアップ (興奮水準を高める)を 行うだけでなく、イメージ、目標設定、集中力、 セルフトーク、プラス思 考、また試合本番に対する心理的準備などが組み 合わさり、総合的に作用 する必要がある。
簡単に 言えば、メンタルトレー ニングをすること自体 が、ゾーンといわれる心 理状態(火事場のばか力状態)に入るためのプログラムだということだ。メンタルトレーニングの目的の一つは、スポーツ選手に最高のパフォーマンスを発揮してもらうことである。それには選手がどんな心理状態のときに最高のパフォーマンスを発揮するのか理解する必要がある。
また一般の方々も、最高のパフォーマンスを発揮する心理面や、その強化や準備の方法を理解しておくことは、仕事・受験・試合などの本番で実力を発揮したいときに役立つものだと思う。
選手時代の経験
私自身、プレーヤー(野球)時代にゾーン(火事場のばか力状態)に入ってるなと確信したときがあった。『体が軽い、楽しい、強気、自信、相手の配球がわかる、自然に体が動く、ボールが大きく止まって見える』などを感じ、信じられないプレーができた経験がある。
これは、ネクストバッターサークルで感じたことだが、鳥肌が立つくらいの興奮が襲った後、必ず打てると思ったのだ。ツーアウト満塁でのビッグチャンスに走者一掃の三塁打を打ったのだ。この時は、対戦する投手の配球も読めたし、周りの動きがスローモーションに感じることができた。このように、選手がいつでもゾーンに入ることができれば、『いつでも自分の実力が発揮できるはず』と思うはずである。
日頃からの練習が必要
そのためには、ある特定の気持ち(心理状態)をつくることが重要である。大舞台で力を発揮させるために指導者として大切なことは、選手たちにゾーンの感覚を経験させることだと思う。日頃から練習などで心身ともに追い込んだりして、無意識・本能的に、または偶然にゾーンの状態に入らせることが重要である。結果として、ゾーンに入る可能性を高くすることである。そして、最終的に意図的にゾーン状態に入ることができる選手に育成することが、勝利への近道である
まとめ
・リラクゼーション(緊張を緩める)
・イメージ、目標設定、 セルフトーク、プラス思考
・どんな時にゾーンに入りやすいかを検証する
(星槎スポーツ新聞Vol.21 より)